NPO 法人セーフティネット秋田つなぎ隊による
重層的・複合的居住支援事業モデル

I. NPO法人の基本理念と戦略的位置づけ

このNPO法人セーフティネット秋田つなぎ隊は、秋田市を拠点として居住支援法人としての指定を受け(またはその役割を担い)、「住まい」の提供と「支援」(福祉サービスへのつなぎ)を一体的に行う「総合的支援かつ複合型居住支援」を提供することを目的とします。

当法人は、不動産(大家のリスク軽減、物件確保)と福祉(要配慮者の定着支援)という、これまで分断されがちであった二つの分野の橋渡し役として機能します。

当法人は、大家(オーナー)が要配慮者への賃貸に対して抱える「経済的リスク」「法的リスク」「人的リスク」の三大不安を解消するため、サブリース契約(特定賃貸借契約)を基盤としたリスク軽減サービスを提供します。

事業名目的NPO法人の具体的活動と制度活用
居住支援型サブリース事業(補助対象)大家の空室・滞納リスクを解消し、要配慮者専用の賃貸物件(セーフティネット登録住宅)を確保する。大家とマスターリース契約を締結し、家賃を保証する。この際、サブリース新法に基づき、プロの不動産業者へ相談の上、大家に対して重要事項説明や契約書等の作成を行う。空室1室から物件の引き受けを行う。(一軒家、集合住宅、マンション、アパート一棟なども想定)
オーナー /入居者 安心パッケージ入居後の人的リスク(近隣トラブル、死亡時対応)をNPOが担うことで、物件提供を促進する。入居者との間で死後事務委任契約や退去支援の仕組みを提案する。提携する家賃債務保証会社(ナップ賃貸保証、新日本信用保証、エール賃貸保証など)のプランを利用者に適用し、経済的リスクを二重にカバーする。
居住サポート住宅導入
(補助対象)
ICTを活用し、福祉サービスにつなぐための日常的な安否確認・見守り体制を住宅に付加する。血流認証ゲートシステムなどIOT見守りシステム(サポート会社、管理会社に委託)を導入する。これにより、鍵の紛失リスクなく高い安全性を確保し、入退室記録や長時間の開閉がない場合の通知機能によって入居者の見守りを強化する。専用住宅改修補助金を活用した機材購入の提案・協力を行う。

III. 支援の柱:複合的相談支援と地域定着サポート(福祉的側面)

当法人は、自治体から各種相談支援事業や居住支援事業の委託・補助を受け、多岐にわたる要配慮者に対して「伴走支援」を長期的に提供します。

支援領域活用制度NPO法人の具体的活動とリンク構造
初期相談・計画策定自立相談支援事業障害者相談支援事業地域移行支援(相談支援事業)相談者(生活困窮者、障害者)の課題をアセスメントし、生活の困窮状態からの脱却に向けた自立支援計画(プラン)基盤となる。(生活自立支援窓口と連携)
施設退所・地域移行地域移行支援 (障害者総合支援法)障害者支援施設や精神科病院等からの退所・退院を望む障害者に対し、地域生活への移行を支援する。NPOが確保したサブリース物件を転居先として提供し、居宅生活への移行のための調整(入居支援)を行う。
地域定着・見守り地域定着支援 (障害者総合支援法)地域居住支援事業 (生活困窮者自立支援法)<障害者> 居宅において単身等で緊急時の支援が見込めない者に対し、常時の連絡体制を確保し、緊急事態等に相談・必要な支援を提供する(原則1年間で更新可)。 <生活困窮者> シェルター退所者や孤立した低所得者等に対し、訪問等による見守り支援や生活支援(生活習慣、金銭管理の助言など)を行う(原則1年間で延長可)。
孤立防止・地域づくり地域居住支援事業(地域とのつながり促進支援)重層的支援体制整備事業(参加支援・地域づくり)共同利用のリビングを設けるなど、対象者が集まれる互助の関係づくりを支援し、社会的孤立を防止する。地域の多様なつながりポイント(商店、NPO、ボランティア等)をうまく活用し、対象者を地域につなぐ(参加支援)(居住支援協議会と重層支援の協働)
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Ⅳ.重層支援、居住支援、地域ケアシステムの連携の必要性と有用性

1. 連携の必要性:なぜこれらのシステムは統合されなければならないのか

1). 制度の縦割りと課題の複合化への対応

日本の社会保障制度は、歴史的に高齢者、障害者、子ども、生活困窮者など専門分野単位で制度設計されてきました。しかし、近年、高齢の親と無職の引きこもりの子どもが同居する「8050問題」や介護と育児に直面する「ダブルケア」など、複数の分野にまたがる複雑化・複合化した課題が増加しており、単一の制度や支援だけでは対応が困難です。 重層支援は、この分野の「縦割り」制度の狭間で孤立する人々を「たらいまわし」にせず、包括的に支援する体制を構築することを目的としており、既存の各分野の体制(地域ケアシステムを含む)が連携するための仕組みとして不可欠です。

2. 支援の切れ目の防止と早期介入

住まいに関する課題を抱える方は、住まい以外の困りごと(複合的な課題)を抱えていることが多く、不動産情報を提供する「入居前」の支援だけでは解決しません。円滑な入居とその後の住まいの安定を図ると共に適切な介護保険サービス及び介護予防サービスを受け、地域での生活を継続する事が可能となります。

2). 連携の有用性(メリット):連携によって何が可能になるのか

①地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制の構築

重層支援は、この地域共生社会の実現に向けた取り組みであり、対象者を絞らず、同時に障害者や困窮者世帯などに対応した居住支援と高齢者世帯を対象とした地域包括ケアの連携を制度的に推進することで、支援が必要なすべての人々に対する「適切な支援と円滑な課題の解決」を促進します。

地域包括ケアシステムと重層的支援、生活困窮者自立支援制度の各制度の理念を複合し、高齢者のみならず、障害者や子どもなど生活上の困難を抱える方が自立した生活を送れるよう、地域包括ケアの理念を普遍化し、引きこもり世帯、8050問題などにも対応した地域を「丸ごと」支える包括的な支援体制(地域共生社会)を目指すものです。

②専門的な伴走支援の強化

重層支援が重視する伴走支援は、対象者の課題解決に直結しなくても、そばに寄り添うことで孤立を防ぎ、関係性を作り上げていく手法です。 地域ケアシステム(地域活動支援センター)や居住支援(特に地域居住支援事業や地域定着支援)を通じて、NPOや福祉事業者が居宅における訪問等による見守り地域とのつながり促進支援を提供することは、まさにこの長期間にわたる伴走支援を具体的に実現するものです。

地域包括支援センターや基幹相談支援センターなどの専門職が、その地域の見守りや支え合い活動(地域づくり)を側面的に支援し、継続的なつながりを持続させます。

3) 3つのシステムの具体的なリンク構造

重層支援、居住支援、地域ケアシステムは、多機関協働という手法を通じて、以下の機能的階層でリンクします。

連携 システム担う役割(機能)重層支援・地域ケアシステムへの貢献
居住支援 (居住支援協議会、居住支援法人、SN住宅等)【生活基盤(ハード)の確保とリスク対応】 民間賃貸住宅の供給(サブリース)と大家のリスク解消。入居前、入居中、退去時の切れ目のない支援の土台を物理的に提供。生活の土台を安定させ、重層的支援(個別ケース検討)や地域ケア(見守り、介護)の施策が効果的に機能するための必須の前提を提供する。
地域包括ケアシステム (地域包括支援センター、地域ケア会議)【高齢分野の総合相談窓口と地域調整】 高齢者に対する総合相談と、医療・介護・生活支援の連携体制(地域ケア会議等)を日常圏域で整備する。        重層支援の多機関協働において、高齢者分野の専門性を担保し、地域の実情に基づいたインフォーマル・サポート(地域の支え合い、居場所づくり)の資源を提供する。
重層的支援体制整備事業 (多機関協働、重層的支援会議)【分野横断的な課題解決と体制強化】 既存制度で対応が難しい複合課題(8050、ダブルケア)を抱えるケースに対し、多分野の関係者を集めた会議(重層的支援会議)を通じて最適な支援プランを調整・実行する。居住支援(不動産)や地域ケア(高齢)を含む、すべての関係機関の専門性を集約し、個別ケースにおける課題解決を推進する。また、支援全体を俯瞰し、他機関につないだ後、再び元の支援(居住支援や地域ケア)に**「つなぎ・もどす」**ことで、支援の連続性を担保する。
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. 居住支援協議会の設立によるプラットフォームの活用と重層化戦略

NPO法人が地域で継続的に事業を展開し、複雑な課題を解決するためには、行政や関係機関との「場」を積極的に活用し、連携体制を整備することが不可欠です。

1. 居住支援協議会の活用

居住支援協議会は、住宅と福祉の担当者が連携し、地域の居住支援体制を整備する「つながりの場」です。NPO法人は、協議会の主要な構成員(居住支援法人)として、以下の活動に貢献します。

土台づくり: 福祉事業者と不動産事業者がお互いの立場や課題(大家の滞納リスク、要配慮者の健康状態など)を理解するための研修や意見交換会を企画・実施する。

仕組みづくり: NPOの提供するサブリース・見守りサービス(ICT含む)を、要配慮者の居住を担保するための標準的な「支援パッケージ」として協議会で提案・承認を得る。

資源づくり: 協議会を通じて、連帯保証人の問題解決のためにNPO法人を新設した大牟田市の例を参考に、地域のニーズに合った家賃債務保証の仕組み(ナップ賃貸保証などとの提携)や、身元保証・死後事務委任契約等のリソースを開発し、地域全体で活用できる資源とする。

2. 重層的支援体制整備事業(重層支援)とのリンク

重層支援は、分野の縦割りを越え、複雑・複合的な課題を抱える住民(8050問題など)に、断らない相談支援、参加支援、地域づくりを一体的に提供する包括的支援体制です。

重層的支援会議への参加: NPOは、重層的支援会議(多機関協働事業)に参画し、住まいの不安定さや地域での孤立を背景に持つ困難ケースについて、不動産的・福祉的な専門性を提供します。NPOが提供する居住支援(サブリース物件と見守り)は、重層支援における生活の土台を提供します。

地域に定着する 「つなぎ・もどす」機能の実現: 利用者が他の専門的な支援(就労支援、医療など)を受けている間も、NPOは住居と見守り支援を継続することで、支援全体を俯瞰し、他の支援が一段落した際に、再び安定した地域生活へと**「もどす」**役割を担います。

財源の柔軟な活用: 重層支援の交付金一体的交付の仕組みを活用することで、障害者(地域定着支援)と生活困窮者(地域居住支援)への見守りや居場所へのつなぎといった重複する支援業務に対し、会計検査を気にすることなく柔軟に職員や資源を配置し、創意工夫ある活動を展開できます。

. まとめ 当法人が実施を予定する各事業・制度の重複と棲み分けの整理

制度・ 事業対象者目的・機能 (棲み分け)NPOの事業におけるリンク (重複・活用)
サブリース事業大家/オーナー/支援対象者【不動産/リスク管理】 NPOが大家のリスクを肩代わりし、物件を確保する供給機能。宅建業免許は不要とされるが、新法に基づき重要事項説明が必要。居住サポート住宅やセーフティネット登録住宅のハード面の基盤として利用され、賃貸借契約管理を行う。
居住支援協議会行政/不動産/福祉関係者【調整プラットフォーム】 地域の居住支援体制の土台づくり、仕組みづくり、資源づくりを行う資源開発・政策調整の場NPOは資源開発(家賃保証会社との提携、死後事務の仕組み提案など)を行い、その成果を重層支援のケース会議に持ち込む。
重層的支援体制整備事業属性を問わず複合課題を抱える全住民【福祉/包括的対応】 既存の縦割りを越えた包括的相談(断らない相談)と多機関協働による伴走支援・課題解決の仕組み。  居住支援を生活基盤の安定として提供しつつ、地域ケアシステム(地域包括支援センター、社会福祉協議会との連携)をと共同で、対象者を絞らず重層的な支援を実行する。アウトリーチ支援も実施し、ケースの発見や制度の狭間へのアプローチも可能となる。
生活困窮者自立支援制度生活困窮者、不安定居住者【福祉/自立支援】 生活困窮状態からの脱却と就労による自立を目指すための支援(プラン作成、住居確保給付金、就労支援等)を提供する。  自立相談支援事業と連携し、支援プランを策定する。地域居住支援事業を委託され、一時生活支援事業等も活用し、入居支援や入居後の見守り支援(生活支援、互助の関係づくり)を実施する。 困難ケースに対してNPOと窓口と連携を取り、行政や法的措置では解決できない課題に独自サービスで支援を実行する。
地域移行/定着支援施設・病院等から地域生活へ移行する障害者【障害福祉/専門支援】 障害の特性に基づく緊急対応や専門的なフォローアップを、地域生活への移行期(移行支援)と定着期(定着支援)に提供する。地域居住支援と重複する部分(訪問による見守り、生活支援)があるが、こちらは障害特性に特化した専門的な緊急時対応を担う点に棲み分けがある。NPOが両方のサービス指定を受けることで、切れ目なく対応できる。
居住サポート住宅/ICT住宅確保要配慮者【住居/安心確保】 大家・要配慮者の双方の安心を確保するため、ICT(血流認証など)による安否確認と、福祉サービスへの確実な**「つなぎ」**を義務付けた住宅。NPOは自らが見守りの提供主体となり、地域移行支援や地域居住支援のサービスと連動させて、支援をより確実にする。 (死後、退去後のサポート補償、家賃債務保証、見守りサービスなどパッケージサービスとして提供)
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まとめ

NPO法人セーフティネット秋田つなぎ隊事業モデルは、サブリースによる物件確保という「不動産的な手段」と、地域移行支援、地域定着支援、地域居住支援といった「福祉的なサービス」を重層的に組み合わせることで、多様な制度の狭間にいる人々の「住まいと暮らし」を総合的に支える体制を、地域共生社会のプラットフォーム(居住支援協議会、重層支援)を通して実現するものとなります。